池袋芸術劇場であった舞台「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を観てきました。
2026年1月15日の夜公演でした。
原作は村上春樹さんの同名の小説です。
私、ハルキニストではないのですが、中学生~大学生にかけて村上春樹作品をどっぷり読んでいた時期がありまして。中でも一番好きな作品がこの「世界の終わりと~」だったのです。25歳くらいまでは繰り返し読んでいました。しかし村上春樹さんの作品から足が(手が?)すっかり遠のいて今や40代後半。
そんな状態でこの舞台があると知ったのは1月初め。観たいけど良い席のチケットは取れないだろうなーと思いつつサイトを見たら、なんと3日後の席で良いところがぽっかりと2席空いている(関係者チケットが戻ってきたのか?)。
そんなわけで素早くチケット確保して、平日夜に娘(中1)と行ってきました。
2つの世界が見事に設定され、癒合していく
原作に忠実、むしろより幻想的になっている
原作が好きで、実写化とか見るとがっかりするパターンあると思いますが、今回の作品は原作の世界観をそのまま忠実に舞台化され、独自の解釈は加わってなかったと思います。
今回の舞台化にあたっては、演出と振り付けを担当したのはフィリップ・ドゥクフレさんというフランス人アーチスト。親日家のようですが、日本語小説→フランス訳を読んで、理解して→日本で日本人役者さんたちと舞台を作る、という作業だったようです。
主人公が生きる「ハードボイルドワンダーランド(東京)」(ここでの主人公は藤原竜也さん)と、
主人公の心の中にある「世界の終わり」(ここでの主人公は駒木根葵汰さん/島村龍乃介さん)。
「世界の終わり」は塀に囲まれた町で、一角獣が多数生きており、その中で暮らす人々は心を持たないがゆえに争いもなく平穏な日々を送ることができる。この町の住人になるには「自分の影」を切り離して、影が死ななければならない。(影役は宮尾俊太郎さん、バレエダンサー兼俳優さんですから踊りが美しい)
「世界の終わり」がどこにあるかに、気づかせるタイミング
小説ではこの2つの世界の描写が行ったり来たりして、「世界の終わり」は主人公の心の中にある世界なのだと読者に気づかせます。
小説を読むと「もしかして・・・でもやっぱり、そういうことか!!」という謎解きを解決したような達成感があるのです。
しかし舞台では時間の尺の問題もあって観客に早々に気づかせる形になっていました。
その点が小説に親しんだ立場としては違うなというか、時間の制約はあるにしろ寸足らずになって残念だなと思いました。
プロジェクションマッピングとバレエ
2つの世界とも小説の情景をよく忠実に表現されていたと思います。
舞台装置(プロジェクションマッピングや光の効果)は想像以上でした。冒頭のエレベーターのシーン、計算士としてシャフリングするシーンなど、小説で文字として読むよりも今回の舞台演出で見る方がずっとインパクトがありました。
また一角獣や自然(森や泉)を表すダンス、現実世界の人々を表すダンスも想像以上の素敵さでした。随所でバレエでした。
最初に一角獣が出てきたとき娘から小声で「お母さん、みんなポワントしてる」と言われて一角獣たちの後ろ足がバレエのポワントになっていることに気づきました。だからより優美で儚く感じれたのですね。
音楽はピアノ1台で演出され、舞台袖にわずかに奏者の方(権頭真由さん)の美しい背中とともに奏でられるのが儚げで、この舞台に合っていました。
観客の層は、わりと年齢高め?
村上作品性描写が多いことをすっかり忘れて、娘を舞台に連れて行ってしまいましたが、そういう表現のシーンやセリフはありました。生生しいところはなかったですけど、連れてくるには早かったかなと一瞬思いました。
観客は40代よりも上の方がほとんど。男女でいうとやはり女性の方が多いのですが、それでもバレエやミュージカルに比べると男性客が多いなと思いました。しかも男性単身で来られているかたもチラホラ。子どもは全然いなくて、大学生っぽい方もほとんどいなかった気がします。
演者が少なかったことに驚き
最後のカーテンコールで気づいたのですが、この舞台はピアノ奏者含め舞台上に上がっているのは19名しかいなかったのです。思わず数えてしまいました。そのあとHPでもキャスト人数を再確認しました。
役者さんが2つの世界で兼任しているのは分かりましたが、ダンサーさんは10名しかいなかったのです。ダンスはダイナミックで、しかも衣装も様々なものがあったのでもっと多くの人が関与しているのかと錯角していました。早着替えでそれぞれのシーンに対処していたのですね。驚きでした。
そして2つの世界でヒロインや演じた森田望智さんの声の使い分けにも驚きました。公式動画で「世界の終わり」で森田さんがセリフを言うシーンを見て、このアニメ声は一体何?と思ったのですが、もう一人の人物と分けるために敢えて高い声にしていたのですね。「ハードボイルド・ワンダーランド」では普通の成人女性の声で安心しました。
村上作品未読な人は楽しめる?東京以外の公演は?
今回急に舞台を観に行くことにしたので、娘(中1)は原作を読まないまま鑑賞でした。
終わった後にお話分かった?と聞くと「大体わかったと思うけど、最後のシーンってどういう意味なの?」と。
最後に主人公がどういう決断をしてどういう結果になったのかは、舞台だけでは伝わらない人がいるのかもしれません。
私は原作をどっぷりと読んでいたので(と言っても最後に読んでから20年くらいは経っている)すべてが理解できない部分はなかったです。
逆に「そう、このくだりが小説でもあった」と20年ぶりに思い出されて、若いころに心酔した作品って、年とっても深く心に刻まれているのだということが分かりました。
だから若い時に、読書など色んな作品に出合って刺激を受けておくって大事だなとあらためて。
↓小説は買い直し、現在娘と私で読んでいます。初版が1985年ということで、ちょうど40年のようです。
今後は東京公演(2/1まで)ののち、宮城・名古屋・兵庫・福岡と回り、4月~10月は中国・シンガポール・パリ・ロンドンと海外公演もあるそうです。村上作品は海外でも人気だそうですから、この舞台が他国でも受け入れられると嬉しいです。

